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専攻科2年生 工学倫理 | 学生が主体的に学ぶ授業づくり研究会
「学生が主体的に学ぶ授業づくり研究会(通称 学び研)」は、
国立富山高等専門学校の教職員を中心に活動する有志の会です。
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専攻科2年生 工学倫理

 

♦ 授業づくりのキーワード

  • ケーススタディ型 / 技術士1次試験免除の資格取得 / チームによる共同学習 / 分析力 / 判断力 

♦ 教授・学習のスタイル

工学倫理の教授・学習スタイル

工学倫理の教授・学習スタイル

 本授業(専攻科2年生工学倫理)は、単位修得により技術士1次試験が免除になる必修科目です。テキストに沿った講義によって過去の事故事例を学びながら工学倫理の考え方を身につけ、実際にPBL手法を用いて身近な事故事例の検証を行います。
 
 90分の授業は、毎回、最初の70分が講義と演習、20分でグループワークをします。
 
 グループワークでは、自分たちが関心をもっている身近な事故事例を選び、講義で学んだ工学倫理の視点や分析方法を用いて、検証していきます。最終的に、プレゼンテーションを行い、質疑応答を交えて全員で議論をします。
 
 毎週20分のグループワークは、調査 ⇒ テーマの選択 ⇒ グルーピング ⇒ 分析と調査(何度か繰り返す) ⇒ プレゼン、質疑応答と議論 と進めます。「ケーススタディ形式」の授業スタイルです。
 

♦ 授業づくりの概要

  •  授業づくりは、まず、講義だけでは学生に実践力がつかないので、グループワークを取り入れたい という担当教員の強い思いからスタートしました。そこで、グループワークを取り入れる目的を次の通り明確にしました。
     

    (1) 講義やテキストで得た知識を、実践的に考えることができるようにするため
       (講義をただ聞いて筆記テストで再現できたとしても、理解が深まっていかないため)
     

    (2) 個の倫理観を組織全体へと反映させるためには、個々が実践的な「コミュニケーション力」「交渉力」「プレゼン力」「調査力」「論理的思考」「批判的思考」をもたないと実現しないので、その訓練を行う
     

    (3) JABEEの認定条件に「チームワーク力」が加わったのでグループワークを取り入れる
     

  •  この授業は、技術士1次試験免除のJABEE認定により、技術士補の資格を得ることができる必修授業です。そのため、工学倫理の基本的な知識や考え方の習得は不可欠で、それらを使って新しい事故事例を分析する力をつけることが求められます。そこで、90分/週、15回の授業を次のように進めることにしました。
  • 工学倫理の進め方スケジュール

    工学倫理の進め方スケジュール

     

  •  
     講義で必要不可欠な情報(工学倫理の意義、企業活動における位置づけ、事故事例の検証の方法と考え方)はこれまで通り提供しつつ、情報を使いこなす実践と、JABEEで要求されるチームワーク力をつける訓練を組み込むために、90分の中で毎回グループワークを行うように組み立てました。(90分の授業は、昨年度までは100%講義でした。)
     たった20分でグループワークをすることが可能であるのは、この学生たちは、1年次に「専攻科特別演習・実験」でPBLを体験しているためです。一部の学生は、学科生の時にも、PBLを体験してます。すなわち、PBLの基礎力である、「議論」「合意形成」「思考の視覚化、文章化」「情報収集・選択・活用・発信」のスキルはある程度習得し、コツをつかんでいる学生であるということです。そこで、このような授業計画が可能であり、学びの質を高めることを要求しても大丈夫ではないかと考えました。
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  •  授業でつけてほしい力は、社会人基礎力の「シンキング力」「アクション力」「コミュニケーション力」を挙げてありますが、前述のように工学倫理としての「力」に重点を置くことにしました。事故事例を検証するワークでは、1技術者の立場で何ができるのかを考えるワークを予定していますが、おそらく、実社会では、技術的な問題を発見した場合、上司に報告することが最初の仕事になるはずです。個人が有する倫理観を組織へと反映させ、重大事故や内部告発などを未然に防ぐことができる力は、通常の「シンキング力」「アクション力」「コミュニケーション力」とは、少し意味合いが異なる可能性があります。span style=”color: #3366ff;”>説得力のある交渉をして上司を動かすくらいの「…力」が必要になることでしょう。
     本授業の中で、その力を育成することはそんなに簡単にできません。この授業では、そのようなspan style=”color: #3366ff;”>工学倫理に必要な「…力」をつけることの重要性を理解することが必要です。 
  •  

  •  そこで、本授業におけるグループワークの目的を次のように具体的に設定しました。

    (1) 講義やテキストで得た知識を、実践的に考え使えることができるようにするため
      (講義をただ聞いて筆記テストで再現できたとしても、理解が深まっていかないため)
    (2) 個の倫理観を組織全体へと反映させるためには、個々が実践的な「コミュニケーション力」「交渉力」「プレゼン力」「調査力」「論理的思考」「批判的思考」をもたないと実現しないので、その訓練を行う
    (3) JABEEの認定条件に「チームワーク力」が加わったのでグループワークを取り入れる

 

♦ 授業の概要

(1)科目名  工学倫理(Engineering Ethics)シラバス
 
(2)受講学生 専攻科(2ME,2CK)25名受講
(3)担当者  教員1名、技術職員1名
(4)時間数  90分/週

 

♦ 授業のキーワード

工学倫理 技術士 知財教育 製造物責任 内部告発 リスク管理 ESD等

 

♦ 担当教員のねらいⅠ(シラバス:学習目標)

(1)地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養、および、技術が社会や自然に及ぼす影響や効果、および技術者が社会に対して負っている責任に対する理解(JABEE技術者倫理の教育目標)。
(2)産業技術の歴史的発展の経過や災害事例(失敗事例)とそれらに対応してきた先人の知恵を学ぶことにより、工学倫理の自主的な思考と実践力を培い、技術士補としての自覚を促す。
(3)また、「お客さまに喜ばれる」いいものを創りだし、社会に貢献することがぷろのエンジニアとして「守るべき道」と考え、日々、我々が遭遇する複雑な問題の論点を整理して基礎的知識と考え方を会得する。

※ 「ねらい」は欲張らない方がよい。チームによるProject型で進めるため、チーム内でのコミュニケーション力やチームワークなども「ねらい」に加えたくなるが、この授業では、上記の4つに絞って授業を進めた。

 

♦ 担当教員のねらいⅡ(シラバス:目標と評価)

 

科目の達成目標 評価方法と基準
・工学倫理の論点と基礎知識の理解。
・技術士倫理規定と組織の中の技術者の位置づけ
・事故事例の検証と公益確保の考え方
・リスクとヒューマンエラー
・費用と便益の考え方など
期末試験で評価
技術士1次試験の適性科目合格レベル(60%)
出席と取り組みの姿勢の評価(20%)
レポート提出(20%)
・規格と法規、
・製造物責任・内部告発の意義と理解
上記および下記の試験問題に含む
・知的財産権の重要性と特許戦略の理解 理解度をレポートで評価する(30%)
出席点含む
・工学倫理テスト
   (基礎、事例、技術士適性試験など)
期末試験で評価(30%)

 

♦ 主体的に学ぶことを支援するために使用した機材や学習ツール

(1)PCとプロジェクター
   (配付用のスライド資料は、講義で触れない部分も自主的に学べるように内容を充実)
(2)テキスト
   (過去の事故事例の検証を演習するためのもの)
 

♦ 主体的に学ぶことを支援するために利用した手法

(1)Project-Based Learning の学習理論と手法 ≪解説へ≫
(2)ブレーンストーミング、マッピング ≪解説へ≫
(3)プレゼンテーション(発表と質問) ≪解説へ≫
(4)クリティカル・フレンズ(批判的な友達) ≪解説へ≫
 

♦ 授業の進め方

【第1週】90分

① 講義:イントロダクション-本授業の意義と達成目標、評価方法など(30min)
② 講義:シラバス、スライド資料に沿った講義(30min)
③ GW:講義を受けて振り返りのワーク(20min)

GWのテーマ:
  「工学倫理」という授業の意義、なぜ工学倫理があるのか、今なぜ工学倫理なのか
内 容:
  1.グルーピング・・・席が近い4人でチームを結成、5チームができる(2)
  2.名刺大の付箋に個々がテーマについて自分の考えを書き出す(5)
  3.大判紙に付箋を貼り(マッピング)ながら議論、まとめていく(10)
  4.他の人が見てわかるように、色ペンで線や補足を書き足す。(3)

※ ファシリテーションのPoint
・学生は最終学年であり、このようなワークは手法として慣れているので、質の高さを求めることができる。
・20分という時間的制約があるので、テンポ良く促していくことが大事。
・テンポよく促すときには、ファシリテーターは、無駄な言葉を使わない、冗長な説明をしない短い言葉で的確な指示を出す、などが大切
・また、静かに考える時と、チームで議論する時のメリハリをつける。
・内容に対する問いかけの時間はないので、まとめ方の形やデザインについて足りない点に気付かせる問いかけをする。

 

※ 宿題:最近の時事問題から関心がある事件や事故について調査して資料を持ってくる。
 

【第2週】90分

① 演習:技術士一次試験過去問の例題(25min)
② 前回の復習(2チームが前回の結果を発表)(10min)
③ 重要なスライドを再説明(10min) 
④ 講義:教科書に沿った講義(25min)
⑤ GW:興味・関心がある最近の事故事例、チーム分け(20min)

GWのテーマ:
  調査してきた最近の事故事例を分類する
内 容:
  1.個々が調査してきた事故事例を青色の付箋紙に書き出す(2)
  2.前面ホワイトボード上でマッピング(5)
  3.教員からのコメントを参考にこのクラスで取り組む数テーマを決定する(5)
  4.各自が取り組むテーマを決めて、グルーピングし、
    次回のステークホルダーの関係図作成の準備を行う(8)

※ ファシリテーションのPoint
・1と2はテンポよく、前面のホワイトボードに大判紙を貼って、全体でマッピングをする。
・教員からは学生の関心事にコメントを加え、さらに、分析・検証すると面白そうな時事問題があれば提示してテーマに加えるかどうかを、教員、学生、皆で議論する。
・数テーマが出そろったら、自分が取り組みたいテーマを選び、1チームが4~5名になるようにグルーピングを行う。専攻科2年生はある程度まかせても大丈夫。

最初に青(学生の関心事)、次にピンクの学生名で班分け

※ 宿題:自分のテーマに関する詳しい資料を集めてくる
 

【第3週】90分

① 演習:技術士一次試験過去問の例題
② 講義:教科書、スライドに沿った講義(70min)
③ GW:自分が取り組む事故事例に関係するステークホルダーを挙げ、関係性を図に表す。(20min)

GWのテーマ:
  ステークホルダーの関係図を作成する
内 容:
  1.グループでブレインストーミング「ステークホルダーを挙げる」(5)
     書記を1人決めて、皆が口々に挙げるステークホルダーを
     付箋紙(名刺大)に書き出していく
  2.大判紙上でマッピング(10)
  3.ステークホルダー間の関係性や、事件・事故に対する重要度を明確にするために
    さらに、どのような調査が必要かを考え分担する(5)

 
※ ファシリテーションのPoint
・ワークは大きな机がある隣の部屋で行う
・ワークの最初に今日のゴールを明確に示すと、学生は自分たちで進められるはずである。
・様子を見て、うまく作業が進まないチームに対しては、ファシリテーターは、作業のペース、5分、10分、5分をコントロールする。
  ⇒様子を見て適宜行う
・ファシリテーターは長い説明はしない、短く指示するだけ(説明は学生が考える時間を奪い、長く話すほど学生は受け身になってしまう)。
・分担したことを記録させて提出させる

 

 

【第●週 11/】90分

① 演習:技術士一次試験過去問の例題(20min)
② 講義:教科書、スライドに沿った講義(20min)
③ GW:事故事例分析とまとめ(30min)

 

【第●週 11/】90分

① 演習:技術士一次試験過去問の例題(20min)
② 講義:教科書、スライドに沿った講義(20min)
③ GW:事故事例分析とまとめ(30min)

 

【第●週 11/25】90分

① 演習:技術士一次試験過去問の例題(20min)
② 講義:教科書、スライドに沿った講義(20min)
③ GW:事故事例分析とまとめ(50min)

 

【第●週 12/2】90分

① 発表要領の説明、準備(15min)
② 4チームの発表とコメント(発表5分、コメント10~15min)
③ 今日の発表に関する講評(10min)

内 容:
  1.Bチーム「ノバルティスのデータ改ざん問題」
  2.Aチーム「JR北海道の事故事例の分析」
  3.Fチーム「福島原発ー汚染水もれー事故事例分析」
  4.Dチーム「福島原子力発電所の事故事例分析」

 
※ コメントの内容
・今、現実に起こっている事故事例について、俯瞰的にうまくまとめることができた
・情報収集はとても大変だが、マスコミから得られる情報の捉え方を身につけてほしい
・Bチームに対して
   発覚の経緯を再調査すること
   データが組織内でどのように扱われ、どこでデータ改ざんが行われたと思われるか
   薬効に対する、消費者、企業内部、告発した研究者、其々の判断の違い、リスクの許容の違い
・Aチームに対して
   赤字、人手不足を理由に安全を軽視する姿勢について
   構造的な問題の整理
   厳しい経営により課題が満載の状況にも関わらず安全を確保するには、誰が何をすればいいのか
・Fチームに対して
   マスコミ報道のあり方と市民として報道をどう捉えるか
   配管の設計ミスの発覚と震災の時期との関係、取り得た対応策について考察すること
・Dチームに対して
   一人の専門技術者として、これからの日本のエネルギー問題をどう捉えるか
   これからの社会を担う当事者として支持する方向性と、その方向性に対して何をすべきか